“スキ”を10文字以内で答えよ
何でこんな事を訊くんだろう、この人は。
今「可愛くない」って言ったら、ここに居る私以外有り得ないじゃないか。
「私が、ですよ」
自分でもこんな事言いたくないのに。
「奈神が?可愛くない?どこが?」
先生がこう訊いてくると、苛々する。
今一番私が可愛くないっていうのを知っているのは、先生でしょ?
仏頂面で、お湯がコポコポと沸かされている音を聴きながら、
「顔も、性格も、考え方も、全部、全部です」
とだけ答えた。
おばあちゃんの部屋にある、私の数少ないアルバムの写真の中。
多分、まだ4歳ぐらいで、幼稚園のスモックを着て、黄色い帽子を被ってにこにこしていた頃の私が、一番可愛い盛りだったんだろう。
まだにこにこ笑っていられたのは、「親に捨てられた」とか「両親があんな人だった」とか、そういう面倒なしがらみが無かったからだ。
意味を知って、事実を知ってしまった今、私はもう、そんな風には笑えない。
ピーッとお湯が沸けた音が響き、インスタントコーヒーにお湯を注ぐ。
「先生もいりますかっ……、?!」
急に先生が、私の両頬を指で摘んだ。
唇が縦に広がり、妙にくる圧迫感。
せっかくの数少ない私の親切を……!