“スキ”を10文字以内で答えよ
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あと1時間頑張れば、お昼休み。
今は、そんなに気を張らなくても良い美術の時間だ。
先生が優しいからなのか、ただ単に不真面目なだけなのかは知らないが、美術の時間、真面目に作業に取り組んでいる生徒は、半分ほど。
周辺の人たちを見るも、先生には目もくれずに、参考書や問題集を読む者、視線を下に落として、ずっと携帯電話を弄っている者ばかり。
進学校という名が、まさにふさわしいこの高校。
携帯電話を弄っている者も含め、ここに居る全員が一応頭の良い生徒である。
高2にもなれば、皆が目の色を変えて、受験勉強に専念するのだ。
そんな中で、私は受験勉強のために参考書を開くなんて事はせず。
放課後に残って作業をするのが嫌だ、という理由だけで、希里に借りた彫刻刀で、板をガリガリと地味に削っていた。
「ねぇねぇ、実依」
黙々と削っている私と居て退屈なのか、隣に座っている希里が話しかけてきた。
「何?」
私は板の木目だけを見て、答える。
「最近ね、面白い本見つけたんだ!クラスでも流行っててね」