“スキ”を10文字以内で答えよ



***



あと1時間頑張れば、お昼休み。


今は、そんなに気を張らなくても良い美術の時間だ。



先生が優しいからなのか、ただ単に不真面目なだけなのかは知らないが、美術の時間、真面目に作業に取り組んでいる生徒は、半分ほど。



周辺の人たちを見るも、先生には目もくれずに、参考書や問題集を読む者、視線を下に落として、ずっと携帯電話を弄っている者ばかり。




進学校という名が、まさにふさわしいこの高校。

携帯電話を弄っている者も含め、ここに居る全員が一応頭の良い生徒である。

高2にもなれば、皆が目の色を変えて、受験勉強に専念するのだ。



そんな中で、私は受験勉強のために参考書を開くなんて事はせず。

放課後に残って作業をするのが嫌だ、という理由だけで、希里に借りた彫刻刀で、板をガリガリと地味に削っていた。








「ねぇねぇ、実依」






黙々と削っている私と居て退屈なのか、隣に座っている希里が話しかけてきた。




「何?」



私は板の木目だけを見て、答える。




「最近ね、面白い本見つけたんだ!クラスでも流行っててね」



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