“スキ”を10文字以内で答えよ



「どんな本?」



今朝、クラスの女子が「面白い」と言っていた本か。


彫刻刀で板を削る手を止め、希里に視線だけ向けた。




「今途中まで読んだんだけど、読み終わったら貸すよ」




楽しそうで何よりです。



「これなんだけどね……」と、引き出しの中から見せようとする希里から、板の木目へと視線を戻し、またガリガリと削り始めた。




「実依、この本知ってる?今雑誌にも載ってて人気なんだよ?」




希里はあまり本の話とかしないと思ってたけどな。

でも、面白い小説とか、エッセーとかは好きだし、今人気のある本って、どういうものかな。




「私、そういうのあんまり知らないか……らッ?!!えええええええ!!!」











嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ?!!

何で私の小説が希里の手に?!!

こんなのが今人気なの?!可笑しい。そんなの絶対可笑しい。今時の女子高生って官能小説とか読むの?!あっ、でもこれはまだソフトな感じで、ハッピーエンドだったし、官能小説って云うよりむしろ恋愛小説って云った方が……って、いやいや、そんな事はどうだっていい!!何で何で何で?!!









約1秒間、自分でも驚くぐらい思考が駆け巡った。




その直後。








――グサリ。





嫌な感触と、引きつった笑いの中、



気づけば、私の掌が真っ赤に染まっていた。



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