“スキ”を10文字以内で答えよ



棚から絆創膏と包帯を取り出し、椅子に座ってから、私の手を優しく触る。

べリッと絆創膏をはがし、まだ薄っすらと血が滲んでいる皮膚の上に貼り、丁寧に包帯を巻いていく。



妙に丁寧すぎて、

私が妙に緊張しすぎて、

息を吐くのさえ、何だか躊躇ってしまう。




「……どうした、奈神。いつもの威勢はどこ行ったんだよ?お前らしくねぇな。何か喋れよ」



しおらしくしていた自分が、恥ずかしくなってきた。



「痛いからそんなしおらしくしてんのか?ん?」



包帯を巻いた手を撫でながら、意地悪い笑みを浮かべる先生。

執拗な撫で方が気に障るわ、やけに緊張してしまうわ、気恥ずかしくて仕方がない。

私の表情をうかがってくる目にじっと捕らえられて、耐えようにも、上手く切り返す方法が思い浮かばずーー





「いちいち気に障る事言いますね。生徒にそんな事しか言えないんですか?あと、そういう風に触るの止めてくれません?」





恥ずかしさを隠すための切り返しが、ただの喧嘩言葉になってしまった。

何でこうなっちゃうんだろう……。


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