“スキ”を10文字以内で答えよ
結局、クラスの中で塾に行っていない子が18人。
その中でも一番人の良さそうな笹野さんに決定した。
可哀想に。
半ば「自分じゃなくて良かった」と思いながら、憐憫の目を向ける。
それにしても、本当に呆れるクラスだ。
無理矢理笹野さんに実行委員を押し付けて、やりたい出し物を言うだけ言う。
笹野さんは慣れていないのか、走って教卓に立ち、ノートにシャープペンシルを走らせる。
向こうでは喫茶店がしたいだの、こちらではお化け屋敷がしたいだの、好き放題に言う皆。
勝手にお化け屋敷で話を進めている者も居る。
黙って見ている私も人のことは言えないが、これはあんまりだ。
担任も何か言えば良いんじゃないかと、チラリと見やると、こちらもまた情けない呆れ顔。
はぁ、と溜め息をつくと、希里がスタスタと歩いて黒板の前に立つ。
「橘さん……」
「これ今出た案ー?私これ書くから、笹野さん話進めてて!」
カツカツと鳴っていく白チョークと、希里の真っ直ぐすぎる後ろ姿。
自分が、恥ずかしくなった。