“スキ”を10文字以内で答えよ
希里は優しいな……。
私、そんなに優しく出来ないし、さらりと人を助けることも出来ない。
皆のことを否定的な目で見ていた私も、同じじゃない。
私も、何か手伝えないかな……。
「ではクラスの出し物はお化け屋敷に決定します!」
まばらな拍手と共に、自分が多数決に参加していないことに気付く。
手伝いたいと思った矢先にこれだ。恥ずかしい。
「じゃあ会計係を決めます。ええと……誰かしたい人……」
笹野さんが言いかけたところで、HR終了のチャイム。
それと同時に、皆も気だるそうに立って帰りの支度に取りかかった。
いつもなら、クラス1番に早く支度をして帰るところ。
今日は違う。
「笹野さん、私会計係するよ」
教卓で暗い表情の笹野さんに、そう言った。
「私、塾とか行ってないし。放課後も時間あるから、手伝えることがあったら言って」
「奈神さん……。ありがとう……」
普段話さない私から話しかけられたのか、それとも、非協力的だと思っていたのか、笹野さんは目をパチクリさせていた。
「あ、じゃあ、今日ね、実行委員会があるの。会計係の人も出席だから、お願いしてもいい?」
「うん、分かった」
気恥ずかしさにも勝る、ちょっとの嬉しさ。
それを感じていた私の目に映ったのは、笹野さんの後ろでニヤニヤ笑っている希里だった。