ジュリアン・ドール
サロンは、何やら懐かしげに、果てしない過去を見つめるように、遠くを虚ろに見つめ語り出した。
「あれはミサがまだ幼い頃の事だ。
そう、年齢で言うと七つくらいだな、確か・・・・・。
ある日、身近に迫った誕生日のプレゼントを捜しに初めて君の実家、ダルダの有名な人形店“ジュリアンド-ル”へ行ったんだ。そう・・・・・、“プリンセス”という名の人形に初めて出会った日だ。
ミサはあの人形に一目惚れをし、買ってくれと、だだをこね始めたんだ。
私は連日ダルダへ足を運び、何度も頭を下げたが、その度に、『これは売り物ではない』と断り続けられ、私は頭を抱えてしまったよ。
自分の我侭を通す為に、ミサは食事もとらず、しまいには、私とは口さえ聞いてくれないという作戦に出る始末さ。
ミサは私の弱みをよく見抜いているからね、自分の我が儘を通す為なら、自分の身体さえ張ってしまうんだよ。昔から、本当に頑固な娘だ。
そんな日が何日か続き、ミサは痩せ細って行くのが目に見えるほどで、それほどまでに気に入って、本当に欲しがっていた物が手に入らず、元気を無くしているのが可愛そうでね、私は尚も諦めずにダルダへ行き、店へ立ち寄っては頭を下げ続けたのだが……、ダルディ殿には断固として断り続けられた。
私としては、可愛い娘に口を訊いてもらえない事ほど悲しい事この上ないし、食事もとらず、みるみる痩せていくミサが心配でたまらんかった。
そして、私さえも心配で食事もできなくなってね・・・・・。
だから約束したのだよ。
・・・・・ミサが嫁に行く迄には必ず、あの人形をプレゼントしてやるとな!
・・・・・もし、私とミサが別れ別れになってしまうなら、今は忘れられたような約束でも叶えてやりたい・・・・・。
私はそう思っているのだよ」
ミサは、サロンの話を聞いて、サロンがどれほどに彼女の事を思っているか、改めて知り、切なさが込み上げて来るのを感じた。
(あんな昔の約束をちゃんと覚えてくれている。・・・・・私にはいつだって優しいお父様・・・・・。私だって、とてもお父様の事愛しているのに・・・・・、それなのに私、・・・・・私はジョウを選んでしまうわ)
そんなジレンマがミサに襲いかかった。
「あれはミサがまだ幼い頃の事だ。
そう、年齢で言うと七つくらいだな、確か・・・・・。
ある日、身近に迫った誕生日のプレゼントを捜しに初めて君の実家、ダルダの有名な人形店“ジュリアンド-ル”へ行ったんだ。そう・・・・・、“プリンセス”という名の人形に初めて出会った日だ。
ミサはあの人形に一目惚れをし、買ってくれと、だだをこね始めたんだ。
私は連日ダルダへ足を運び、何度も頭を下げたが、その度に、『これは売り物ではない』と断り続けられ、私は頭を抱えてしまったよ。
自分の我侭を通す為に、ミサは食事もとらず、しまいには、私とは口さえ聞いてくれないという作戦に出る始末さ。
ミサは私の弱みをよく見抜いているからね、自分の我が儘を通す為なら、自分の身体さえ張ってしまうんだよ。昔から、本当に頑固な娘だ。
そんな日が何日か続き、ミサは痩せ細って行くのが目に見えるほどで、それほどまでに気に入って、本当に欲しがっていた物が手に入らず、元気を無くしているのが可愛そうでね、私は尚も諦めずにダルダへ行き、店へ立ち寄っては頭を下げ続けたのだが……、ダルディ殿には断固として断り続けられた。
私としては、可愛い娘に口を訊いてもらえない事ほど悲しい事この上ないし、食事もとらず、みるみる痩せていくミサが心配でたまらんかった。
そして、私さえも心配で食事もできなくなってね・・・・・。
だから約束したのだよ。
・・・・・ミサが嫁に行く迄には必ず、あの人形をプレゼントしてやるとな!
・・・・・もし、私とミサが別れ別れになってしまうなら、今は忘れられたような約束でも叶えてやりたい・・・・・。
私はそう思っているのだよ」
ミサは、サロンの話を聞いて、サロンがどれほどに彼女の事を思っているか、改めて知り、切なさが込み上げて来るのを感じた。
(あんな昔の約束をちゃんと覚えてくれている。・・・・・私にはいつだって優しいお父様・・・・・。私だって、とてもお父様の事愛しているのに・・・・・、それなのに私、・・・・・私はジョウを選んでしまうわ)
そんなジレンマがミサに襲いかかった。