純愛ヒーロー。
時計の秒針の音だけが、
やけに大きく響く。
もうお母さんが家をでて1時間はたっていた。
でもそれも承知。
不意に周りを見渡すと
冷蔵庫の前に皿ごと落ちたケーキがのこっていた。
「・・・片づけなきゃ。」
帰ってきたお母さんに、
ゆっくりしてもらいたかった。
お父さんに何があったかわからなかったけれど。
近場で見たら、
もはやケーキは原型をとどめていなくて、
皿も砕けていた。
昔コップを落とした時に、
ガラスはさわっちゃいけないと言われたけれど、
今はそんなのかまっていられなかった。
名残惜しいが、ケーキは袋のなかに入れて、
ガラスはキッチンの上に集める。
「・・・あ。」
案の定、小さな私の手のひらからは、
赤い血がでてきていた。