未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
辻之内がとった行動、それは ──
突然あたしの手を握って、顔の高さまで掲げたんだ。
おまけに驚いて見上げたあたしの瞳を真っ直ぐに見つめて、こんなことを言ったの。
「これで、やっと拉致できるよ」
って、しかも満面の笑顔つきで。
それから、手をつないだまま歩きだすものだから、前へ引っぱられ転びそうになっちゃって。
こっちは軽く放心してるっていうのに。
「どうかした?」
立ち止まり、振り返って不思議そうに見つめられる。
「……えっと、拉致って?」
戸惑いながら尋ねると、いつものようにしれっと答えが返ってきた。
「事前に承諾はもらってるんだから、反論はさせないよ」
なんていうか有無を言わせない強引な態度に、それ以上何も言えなくて。
「……////;」
で、でも!
ちょっと、あの、この手、手っ!
普通につないじゃってるけどいいの!?
あたしだけがアワアワしてるのに、当たり前のように前進する彼。
そんな想定外な強引さや、しっかりとつながれた手から伝わってくる体温に頭の中がクラクラして。見慣れた景色も違う色をしてるように映っていた。