未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

視線をぶつけるとその瞳は、いつに増してキラキラしてて、吸い込まれちゃってもかまわないって思えた。


「時田」

「…なに?」

「まだ、試してない実験があるんだ」

「心理学の? ……どんな?」


長いまつ毛を伏せて瞬きをした辻之内。
一度伏せた瞳をゆっくりとした動作で上げて、もう一度あたしを見て──


………そして、言った。



「キスにも、心理的な効果をもたらす秘密があるんだ。

 ……試してみる?」



その言葉に、あたしは特に驚きもしなかった。

それは多分……待っていたから。
ずっと待って、きっと期待していたから。

彼とこうなることを、彼にそうされることを、望んでいたんだと思う。


あたし、辻之内のことが──

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