未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「窓、閉められちゃったから暑いね?」
問いかけたけど、返事がない。
「辻之内?」
「……。
ん? あー、ごめんっ」
と我に返った、って様子。
「どうしたの?」
不思議に思って訊いたら
「ちょっと思いだしてたんだ」
って俯かれた。
「……なにを?」
すると辻之内は、戸惑うみたいに目をキョロキョロってさせてから言ったの。
「時田と一緒に……観覧車に乗ったときのことを、ね」
その答えを耳にした瞬間、あたしの中で何かがはじけた。
ダムが決壊したみたいに溢れ流れでて、勢いを増していく。
「あたしも─」
「え」
視線を感じる。
「あたしも、同じこと思いだしてたの」
そして、ゆっくりと隣を見上げた。