未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「葵のヤツ、何やってんだ?」

「あの女って一体ダレ? 吉井、わかんないの?」

「いや、俺も知らねー」


リカと吉井が交わす会話に、あたしは参加できなくて。

なんの言葉も発せずにいた。




校庭では、絡みつく女の人の腕を辻之内がゆっくりと解いている。


“振り解く”って素振りじゃない。


仕様がないなって感じで、彼女の手をとって優しく戻す。


それは、決して嫌がってるわけじゃない……


そう思わせた。

あたしの目には、そう映った。



辻之内が玄関へ向かって歩きだしたけど、登校途中の生徒達はその場に立ち止まったまま。

騒ぎはまだおさまっていない。


そしてあの女の人は、車へ戻りエンジンを吹かせて帰っていった。
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