未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
少しして廊下がざわついた。


辻之内が来たんだってわかった。



「よぉー葵、朝っぱから何やってんだよ!?」

吉井が声をかける。


「『なにやってる』ってなにが?」

こたえながら教室のなかへ入ってきた辻之内。


あんな大騒ぎになってたのに、いつも通りひょうひょうと言った。


その会話を背中で聞きながら、

好きな人の気配を感じながら


あたしは振り向くことができずにいた。



「湊、どうしたの?」


顔を覗きこまれたけど、リカの目さえ見れない。



あたし、動揺してる……。


さっき見た光景のせいで心臓が嫌なリズムで波打ち、痛みを感じる。



ヤだなー、これじゃ嫉妬だよ。


ちょっと見かけただけなのに。

誰なのかも、どんな関係なのかもわかんないくせに。
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