未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

そのあとで、資料の束を抱えて教室に戻ったあたし達を、みんながはやし立てた。


『戻ってくるの遅くねー?』

『準備室にふたりで、なにしてたんだよー』


そして、口笛と笑い声――



そんなんじゃないのに。

辻之内には、別に思ってる人がいるのに。


冗談でも止めてほしかった。


だって、みんなだって見たじゃない?

辻之内が、彼女の車で送ってもらってるところを。

いろんな噂話をしてるじゃない?


なのに……

余計に惨めになるよ。



席に戻るまであたしは、誰とも目を合わせることができなかった。

本当は俯いてしまいたいぐらいだった。



< 241 / 406 >

この作品をシェア

pagetop