未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*




それからあたしは、辻之内のことを避けることにした。


忘れるためには、それが一番いいんだ。


席替えもちょうどよかったんだ。


さいわい、もとから辻之内は口数の多いタイプじゃないから。

席が離れてしまえば、話す機会は少なくなる。


それに最近の王子ブーム復活で、取り巻きに囲まれてることが多くて、わざわざ近づくほうが難しいから。

こうやって距離を置くことのほうが容易かった。



でも時々、ふとした瞬間に目が合ってしまうことがあって、戸惑ってしまう。


一瞬たじろいで視線を逸らす。

精一杯のあたしの行為。


そのたびに心臓がドキドキして、切なくなる。


こんなあたし、辻之内はどう思っているんだろう?


目が合ったとき、辻之内はいつも何か言いたげな顔をするんだ。


近頃のあたしのこと、おかしいって思ってるかな?

気づいているかな?



―― なんて。


また勝手な思いこみかな。


何か言いたげだなんて、ただの自惚れ。

そんなことないのかも。


ねぇ、淡い期待を持つのも止めようよ。

忘れるって決めたんでしょ?
< 246 / 406 >

この作品をシェア

pagetop