未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
それからあたしは、辻之内のことを避けることにした。
忘れるためには、それが一番いいんだ。
席替えもちょうどよかったんだ。
さいわい、もとから辻之内は口数の多いタイプじゃないから。
席が離れてしまえば、話す機会は少なくなる。
それに最近の王子ブーム復活で、取り巻きに囲まれてることが多くて、わざわざ近づくほうが難しいから。
こうやって距離を置くことのほうが容易かった。
でも時々、ふとした瞬間に目が合ってしまうことがあって、戸惑ってしまう。
一瞬たじろいで視線を逸らす。
精一杯のあたしの行為。
そのたびに心臓がドキドキして、切なくなる。
こんなあたし、辻之内はどう思っているんだろう?
目が合ったとき、辻之内はいつも何か言いたげな顔をするんだ。
近頃のあたしのこと、おかしいって思ってるかな?
気づいているかな?
―― なんて。
また勝手な思いこみかな。
何か言いたげだなんて、ただの自惚れ。
そんなことないのかも。
ねぇ、淡い期待を持つのも止めようよ。
忘れるって決めたんでしょ?