未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*


「なんだか近頃の湊、浮かない顔ばかりしてるね?」



傍らに立ったリカの言葉で我に返ったあたしは、たった今まで眺めていた席から視線を逸らした。


それは主のいない座席。



「王子もカゼかなー?」


今度はリカが辻之内の席を見る。


「……そうかもね。熱出してるってキジモン言ってたし」



空いた座席から視線をずらすと、今井さんを中心にたむろってるグループが目に入った。


「カゼかなー? 心配なんだけどー」

「ねぇ、お見舞いに行けば?」

「えっ お見舞い?」

「それ、いくない? 行っちゃいなよ」

「そーお? 行ってみようかな。誰か辻之内の家、知らない?」


離れていても届いてくる会話に、ため息が漏れる。
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