未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*


その日、学校から帰ったあたしは、部屋の中である物を見つけた。


部屋の片づけをしていたら、出てきた一冊の分厚い本。


なにかしていないと、考えごとばかりしちゃうから。

辻之内のことばかり思っちゃうから、掃除してたのに。



それは、百科事典みたいに大きくて重い専門書。


まだ返してないのあったんだ……。


タイトルの『心理学・解体学書』の文字を、指で撫でた。


明日にでも、学校に持っていこうかなって思った。

それで、辻之内の靴箱か机にそっと返しておこうかって。


でもこんな重たい本、持っていくのだって大変だし。

“そっと返す”なんて、サイズじゃないよね。


どうしよう……。



紺色のベースに黒っぽい金色の文字。

渋い色合いのタイトルに指を置いたまま、しばらく考えた。


昼間、今井さん達のグループが話していたのを思いだす。


―― やっぱりカゼかな?

大丈夫かな……?


「………」



次の瞬間。

よいしょとそれを持ち上げ両手に抱えたあたしは、すっくと立ち上がった。
< 249 / 406 >

この作品をシェア

pagetop