未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
その日、学校から帰ったあたしは、部屋の中である物を見つけた。
部屋の片づけをしていたら、出てきた一冊の分厚い本。
なにかしていないと、考えごとばかりしちゃうから。
辻之内のことばかり思っちゃうから、掃除してたのに。
それは、百科事典みたいに大きくて重い専門書。
まだ返してないのあったんだ……。
タイトルの『心理学・解体学書』の文字を、指で撫でた。
明日にでも、学校に持っていこうかなって思った。
それで、辻之内の靴箱か机にそっと返しておこうかって。
でもこんな重たい本、持っていくのだって大変だし。
“そっと返す”なんて、サイズじゃないよね。
どうしよう……。
紺色のベースに黒っぽい金色の文字。
渋い色合いのタイトルに指を置いたまま、しばらく考えた。
昼間、今井さん達のグループが話していたのを思いだす。
―― やっぱりカゼかな?
大丈夫かな……?
「………」
次の瞬間。
よいしょとそれを持ち上げ両手に抱えたあたしは、すっくと立ち上がった。