未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「先、行くね」


辻之内を追いぬこうとした時、手首を掴まれた。


「なによ?」


「だから、話が終わってないって言ってるだろ?」


あまりにも鋭い目つきに、思わず視線を逸らした。


「…離して?」

「イヤだ」



どうしてよ?


辻之内、なにをしてるの?

どうして、こんなこと。


もう、あたしにかまわないでよ ――。




「離してやれば?」


声がして後ろを見ると、鞄を持ったままの林田くんが立っていた。


「まだ、いたの?」


さっきより一層、怪訝な顔で尋ねる辻之内。


「戻ってきたんだ。困ってるような顔してた時田のことが気になって」


迎えうつように答える林田くん。


そのまま二人、睨み合う。
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