未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「時田、行こ? 王子様の目つきが危ないから、教室まで送るよ」


林田くんの挑戦的な言葉に、あたしの手首を握る辻之内の手に力がこもった。



「っていうか、誰?」


「5組の林田だよ」


「ふーん。それで、なんでさっきからジャマしてくんの?」


「別にジャマしてるつもりはねーよ。時田が困ってるみたいだから離せって言ってるだけ。
辻之内ってさ、よーくモテるのは知ってるけど。女に学校まで送らせたり、いろんな噂も立ってるくせに、それで学校の中でこんなマネしなくてもいいんじゃないの?」


「いろんな噂? ――別にあんたに関係ないじゃん」



辻之内に掴まれたままのあたしは、二人に挟まれるように立っていた。


不穏な空気が息苦しい。


そして

『関係ないじゃん』

って辻之内が言った言葉が、まるであたしに言われたみたいに感じて。


胸に突き刺さった。



ギュッと握られる手首。



どうして、そんなムキになってるの?


あたしのこと、好きじゃないくせに。


こっちは忘れられなくて、こんなに必死になってるのに。


どうして簡単に触れたりするの?
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