未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

ジャーッと勢いよく水を吐きだす蛇口に目を止めたまま

鏡の前、立ち尽くす。


あたしってば、さっきからぼーっとしてばかり。

自分でもあきれるくらい。


そのわけは、よくわかってる。

すべて辻之内のせいなんだ。


もしも今日カラオケに来なかったら。


彼と一緒に横浜へ行ってたなら……


そんなこと考えてしまう、あたしがいて。


でもそれも、もう叶わない。


私書箱の鍵は昨日、宅配で送ったんだ。

借りていた心理学の本と一緒に。



特別授業のあと、逃げるように先に視聴覚室を出たあたしを辻之内は追ってくることもなかった。


これだけ避け続けてるんだもん。

いい加減あきれるよね。


……なんて、あたし。


追ってきてほしかったみたいじゃない。


イヤだな、早く忘れなさいよ。
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