未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「ですから先程から申し上げてる通り、鍵と引き換えじゃないと中の郵便物はお渡しできないんですよ」
カウンターの向こう側に座っているオネーサンは、何度目かのその言葉を繰り返した。
「その……もし鍵を紛失してしまったら、ポストの中身はもらえないんですか?」
「その場合は身分証の提示をいただいて、お渡ししてます」
「じゃあ ――」
「でも! お客様の場合はご契約者様ご本人ではないんですよね?
それではお渡しできませんっ!!」
玉砕 ―――
おまけに眼鏡の奥の冷たーい目で睨まれた。
「すみませんでしたー。どうも……」
軽く頭を下げて狭い部屋を後にする。
暗くひんやりとした廊下へ出たあたしは携帯を取りだした。
さっき電車に乗ってる時に、心配してメールをくれたのは吉井だ。
K区にあるビルってことと
“私書箱”というシステムの、そういう会社だと思う
っていうたったそれだけの情報から、ここの住所を調べて返事をくれたんだ。