未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
「参るよな」


もう一度、繰り返された言葉。


『なーに?』


声には出さず、見上げた瞳をじっと見つめる。


そしたら彼はふふって笑って

「そんな目するとこも、参るんだけど?」

って言って。


背中にまわしてる腕に力を込めた。



「だから参るよ。時田にはさ……」


呟くように言った瞳は、初めて隣の席に座ったあの日のようで。


『だからなによ?』


想いをこめて、さらに見つめる。


照れくさそうな笑みを溢した辻之内は、静かに言った。


「ずっと悩まされてたのに。振り回すようなことしといて急に泣き顔を見せるとか、時田にはやられるよな。

本当はもう少し引いてみるつもりだったのに……」



言ってる意味がわからなくて。

今度はあたしが『ん?』って顔を向ける。


そしたら彼はやわらかく微笑んで

「だから、そんな顔されたら歯止めがきかなくなるかも。

それでもいい?」

って言って。


あたしの唇にそっと口づけた。
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