未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

去年の夏。


心理学の実験を口実に、葵が手紙に託した言葉たち。


彼が先に辿り着いた私書箱には、全部は戻って来てなくて。

イタリア語で書かれた単語をつなぎ合わせても、穴あきの文にしかならなかった。


まぁ すべての手紙が届いてたとしても、イタリア語なんて読めるわけも意味がわかるはずもないあたしだけど。


穴のあいた部分に入るはずだった単語を付けたし、できあがったその文章の意味を葵が教えてくれた。




〝ぼく達は 片方の翼しかない天使なんだ

だから抱きあうことで 初めて空を飛べるんだよ〟




名前は忘れたけど、昔のイタリアの人の有名な言葉みたい。


それはまだ付き合っていない頃に、彼があの“実験”に秘めたあたしへの告白。



教えてくれたあのときは

『高いところが苦手な時田には、空を飛ぶのは無理かな』

なんて、意地悪く笑ってた彼だけど。



葵と一緒なら空も飛べてしまう気がするよ。



< 405 / 406 >

この作品をシェア

pagetop