未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
それにしても、保健室のベッドなんて小学校の時以来かも。
久しぶりに朝から晴れてる今日は、グラウンドで体育をやってるクラスがあるみたいで、外から準備体操の掛け声が聞こえてくる。
この消毒薬の匂い、なんか懐かしいなぁ……と辺りを見回してから倒れ込むように枕に頭を沈めた。
本当は病気でもなんでもないけど、ベッドに寝転がってるとなんとも心地良い。いまが授業中っていうのもあるかも。
カーテン越しに届く控えめでやわらかな陽射しに、ふわふわと睡魔があたしの意識をパクパクとかじりだし……。
あれれ。なんか半分もう夢の中?
少しずつ……ううん、一気に体も頭も軽くなっていく。
そういえば昨夜あんまり眠れなかったんだ。
それってどうしてだったかな?
確か、そう、考え事をしてて………頭を悩ませる原因があったんだよね。えっと、それってなんだったかな? それって………。
そうだ。瞳の綺麗な王子様、天使みたいに美しい “辻之内 葵” 原因はあいつだよ──
多分、意識はその辺りまではまだあった。
ところが、前日の寝不足と布団の気持ち良さと、それから微熱(?)のせいで、いつの間にか深い眠りの中へ落ちてしまったあたしであった。