未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
だから、行こうかって声をかけられても、時田?って名前を呼ばれても、あたしは「………」って状態で。
身長差は多分、軽く20cmはあると思う。
その辻之内が、腰を屈めてあたしの顔をのぞきこんでることにも中々気がつけなかったのは、心臓が激しく騒ぎ立てていたから。
「行かないの?」
目と目があって我に返ると、息がかかるくらいの距離っていうこの状況に………!
「い、行くって何処へ?」
「心理学の書物がある場所へ、だけど。時田、大丈夫?」
「え。
な、なにが? い、い行こうよ! 今すぐに行こっ」
右手右足が同時に出そうな勢いで歩きだす。
大丈夫?なんて台詞はあたしが訊きたいことだよ。自分自身にね。
……まさかの話だけど、あり得ないことだとは思うけど。
王子様の暗示に、辻之内マジックにかかっしまったなんて話、まさかのことだけど。
あたしに限って絶対ないよね──?