Long Road
弓をとった。
相手の音に合わせながら、音合わせを始める。
この瞬間が好きだった。
一瞬、また記憶が横切る。
目の前にいるのは、いつも彼だった。
デュオは特別。
演奏の間中は、まるでこの世には二人しか存在しないみたいな気持ちになれる。
教授のしなやかな音色が響き始めた。
それに寄り添って、でもシューベルトらしい旋律の強さを、わたしは主張する。
主旋律との微妙な競合するバランスをとる必要があるこの曲は、
そのさじ加減が二人の間柄を如実に表す。
最後の音を弾き終わる頃には、久しぶりに満足感を感じていた。