始まりと終わりの間
17
隆也だって彼女の事が嫌いになって別れた訳じゃないんだから、元に戻ればいいんだよ。

アタシ達は、やっぱり"幼馴染み"で十分なんだから。

隆也は、まだ電話してる。
あの困った顔…
気の毒だね…
でも仕方ないよ。

体だけの関係なんて、男の都合だけじゃん。
女は、やっぱり"自分だけの男"になって欲しいもんだよ。

もう30分になる。
痴話喧嘩なら他でやってよね!
ここ、誰の家だと思ってんのよ!

「隆也、帰んな!」

アタシが言うと、隆也が慌てて電話を切り

「あっちに聞こえるだろ?!」

と、文句を言った。

何だか隆也が情けなく見えてきた。

「隆也、帰んなよ。帰ってゆっくり電話するなり、彼女呼び出すなりしたら?」

「彼女じゃねぇよ!」

隆也は、かなりイライラしてる。
上手くいかないらしい。

「とにかく、アタシには関係ないんだからさ、続きは自宅でやってくれ」

タバコに火を点け、フーッと煙を吐き出した。

「梓、冷たいな…」

「当たり前の事を言っただけだよ」

隆也の携帯は、あれから何度もバイブが響いている。
着信の表示が出てるのに、一向に出ようとしない。

「出たら?」

「いいんだよ」

「待ってるんだよ。やっぱり帰んな」

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