マスカラぱんだ


**紫乃**


先生が私のせいで、お医者様を辞めてしまったと勘違いして、取り乱した自分が恥ずかしい。

でも、先生がお医者様を目指した理由と、先生の新たな決意を知ることが出来た私は、嬉しさが込み上げる。

そして、これもすごく嬉しかったの。

先生に必要だと言われ、優しく抱き締められていることも。

取り乱した心が落ち着き、温かくホッとした安らぎに包まれた私の耳元に、先生の声が響く。


「紫乃ちゃん。ほら、夕日が沈む。」

「葵先生。私、葵先生がここに連れて来てくれたこと忘れない。ありがと。」

「僕も忘れないよ。紫乃ちゃんと一緒に見た夕日もね。」


太陽が沈んでいくのを、抱き合ったままふたりで見つめた。


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