夜獣-Stairway to the clown-
乾にも雪坂の血が流れているという事になるのだろう。

研究の結果というのは事件の事だ。

日付を見ても、最初の事件の日になっている。

間違いないと思いながら、次のページへと探りを入れてみる。

『自分の能力の限界、特質を調べるためにさらなる実験を試みる。そして、分かったことは仕掛けられるのは3人までということだ』

これも事件当日の日付になっており、信じられないが間違いないだろう。

しかし、夕子が見たのはこの資料ではないのだろう。

あの顔からすれば乾の行き先がわかったはずだろうし、夕子にも分かる場所にメモが残されてあるはずだ。

急いでそのメモを探すが、すぐさま見つかった。

メモは詰まれた資料のすぐ横にあり、こうかかれてあった。

『君に伝えたいことがある。今夜9時に学校で会おう』

これは乾の字で間違いないのだろうか。

それか別の誰かが仕込んだ罠だろうか。

資料に書かれた文字と一緒のところを見ると、乾の字なんだろうということが分かる。

一つ気づいたことがあった。

「9時といえば、雪坂と待ち合わせしている時間じゃないか」

都合のいいような悪いようなそんな感じがするけど、夕子の身に何かあったならそんなことは言ってられない。

メモを握りつぶし、部屋から急いで出ることにした。

最後の部屋を調べてなかったのでドアを開けようとしたけど、そこだけカギが閉まっていた。

何か他の手がかりがあるのかもしれないと思ったが、開けている暇があるなら夕子が乾の元へ行くことを止めたい。

その部屋だけを無視して、乾の家から出る。

今向かうところといえば二つある。

メモを読んだという事は家に帰って時間まで待っているか、待っていられずに学校でずっと待っているか。

普通なら前者が大多数を占めているのだが、夕子の場合、どれだけ楽しみにしているか想像がつくので、後者もありうるという話である。

すでに日が沈んでおり、今居る場所は学校と家との中間地点の商店街である。

(どっちに向かうか)

ここは重要な選択である、一刻も早く夕子に会うことが今の僕にとっての義務である。

夕子は普通の女の子であり、大多数の選択を選ぶことが普通だということになるかもしれない。
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