INCOMPLETE A PICTURE BOOK



するとイケメンはニコッと笑って、



「私に名前などありません。呼びにくいようでしたら、なにか名前をおつけください」



なんとも勝手な、そして自由な人だった。




潤は思う。


きっとこの人はいつまでも掴めないだろうと。


「……空。雲みたいにつかまえられなさそうだから」


雲を掴んでいるのは空だけだから。



「……驚きました。小夜様と同じ台詞を言われました。どこか懐かしい気がします」



本当に驚いた顔をしている。


笑顔がどこにも見えない。


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