男装人生
「れいりっ‼玲李っ‼」
泣きじゃくる玲李に向かって焦った声がする。
青ざめた顔で覗き込んできた。
もう行ってしまったと思っていた姿に、玲李の涙が自然ととまる。
「怪我だらけじゃないですかっ‼なんでついてくるんです。禁止されていたでしょう?」
みーちゃんはここを通れば付いてこないと思ってたみたいだ。
すんすんと鼻を鳴らし、涙目でみーちゃんを見る。
なぜかみーちゃんまで涙目になっていた。
みーちゃんには全てお見通しなんだ。
「玲李のことは大好きです。でも、それだけじゃダメなんです。私は変わらなければいけない。」
「みーちゃんはそのままでいいもんっ‼」
「時間はそれを許してはくれません。私もこのままでは嫌なんですっ‼」
みーちゃんの頬に涙が伝う。
泣き虫なくせに直接みる初めての涙だった。
玲李にはみーちゃんの言っている意味は一つもわからない。
だけど、それが真実なのであろうということは分かった。
気を紛らわせるかのように、ボロボロになってしまったお気に入りのワンピースをみーちゃんが優しく撫でる。
「もう、サイズが合ってないじゃないですか・・・」
「・・・お気に入りなの。」
この風変わりなワンピースは二人が選んだものだとお父様から聞いた。
嬉しくって、なんだかこそばゆかったのを今でも覚えている。
サイズが合わなくったってずっと着ていくつもりだった。
「新しいのが必要ですね。」
玲李も変わらないといけないと言われてるみたいで、切なくなる。
元には戻れない、そのサインを玲李はやっと受け止めた。
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