妖魔06~晴嵐~
「琴か?」

久々に見たような気がする。

確か、島の後から会ってなかったんじゃないか。

「丞ちゃんにゃ!やっと会えたにゃ!」

どうやってここまで来たのか。

まさか、不幸のパワーで空間を飛び越えてきたとでもいうのか。

だとすれば、無茶苦茶すぎる能力だ。

そして、一番場違いなキャラといってもいい。

霧の影響は受けていないし、吟と琴だけは一線を画している。

「琴はうれしいにゃ」

俺の足に体をこすり付けてくる。

「今はそんな喜んでる場合はねえ!」

「うう、丞ちゃんが怒鳴った、不幸にゃ」

「ちょ、ちょっと待て!今、能力を使うのは」

「琴は一人になったにゃ、みんな、みんな、琴を置いていったにゃ!不幸にゃ!何もかも不幸で泣きたくなる夜が続いたにゃ!」

不幸がすべてを覆うように周囲にエクスプロージョンが起こる。

琴の不幸に巻き込まれ、大妖魔達が粉砕していく。

俺は琴を抱えながら美咲の下へと走る。

当然、千鶴も後ろについて回る。

美咲の下にたどり着いた俺達は様子を伺う。

「美咲、痛みはどうだ?」

「麻痺、して、きたかな」

急所は外れているが、危険な状態であることには変わりはない。

美咲は自分自身に回復は使えない。

思考はとめるな。

自分の脳みそを破壊するくらいに考えろ。

「そうだ」

相手側の大妖魔の中に回復能力を持った奴がいれば、美咲は助かる。

今の爆発の中で動くのは危険すぎる。

だが、今は危険を冒してまで、やらなくちゃならない。
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