妖魔06~晴嵐~
お互いの周りに防護壁をつけていただけあって、離れた千鶴は無防備なのだ。

美咲が咄嗟に千鶴に防護壁をかける。

猿の攻撃が防護壁を叩きつけるが、割れる事はない。

その間に背後の猿に闇をぶつけて消し去る。

美咲のおかげで助かったといえる。

視線を美咲に移す。

「美咲?」

俺の時間が、止まる。

大きな針に串刺しになった、美咲がいる。

腹、腕、足、胸、ところどころに針は刺さっていた。

千鶴を守る際に、自分の防護壁が解けたのか。

分割できないくらいに集中力を必要としていたのか。

見たところ、虫の息のようだ。

「くそ」

焦るなと自分に言い聞かせる。

「美咲、さん、私のせいで」

傍にいた千鶴がパニック状態に陥ろうとしている。

「千鶴、自分のやった行動の意味を理解しているのなら叫ぶな、落ち着け。それが、今やる事だ」

今は、美咲の針を取り除く事が先だ。

「もう、美咲の防壁はない。出来る限り、俺の周囲から離れないように動くんだ。分かったな?」

俺は千鶴の目を見て、答えを待つ。

「うん」

泣きそうな声を抑えながらも、うなづいた。

しかし、どうしたものか。

千鶴を守りながら、美咲の下に行くしかない。

体のガタも来ている。

「にゃあ」

ふと、下を見ると黒猫が歩いていた。
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