still
二宮が出ていくのと入り違いに、
溝口くんが教室に戻ってきた。
急に高鳴る鼓動を感じて、やっぱりあたしは溝口くんに恋してるんだと改めて思った。
「葵衣」
「ん!?あ、溝口くん」
ボーッと考えていたせいで、キョドってしまう。
そんなあたしにお構い無しに、溝口くんは話しかけてきた。
「あいつ、どこ行ったの?」
「二宮なら今ごろ告白されてるんじゃないかな(笑)」
「ふーん。相変わらずモテるな、あいつ」
「そういう溝口くんもモテるけどね」
「モテねぇし。
てか、なんで名字で呼ぶんだよ?」
「へ?」
思ってもみなかった言葉に、あたしは一瞬言葉を失う。
「俺は葵衣のこと名前で、しかも呼び捨てで呼んでんのにさ。
おかしくない?」
「い、いや〜…」
「これからは名前で呼べよっ」
可愛い笑顔でそう言われて、あたしはキュン死にするかと思った。
「…司くんて呼べばいいの?」
「呼び捨てで良いのに。長いし。」
「いや、司くんで」
なんだか恥ずかしくて、呼び捨てには出来そうもないよ…
「ふーん。おっけー」
うわーうわーうわー!
"司くん"だって!!
あたしは嬉しさと恥ずかしさで赤くなった顔を両手で抑え、下を向いた。