幸せの在りか
早く布団の中に入りたい。こんなとこでじっとしてても駄目だ。何とかして帰らなきゃ…。
気力を振り絞って立ち上がろうとした時、「ほら。」と言って背中を向けてしゃがみ込む彼。迷わずしがみついた。ホームに降り立った人たちの視線を浴びているのがわかる。
でも彼の背中の温もりにほっとして、熱を帯びた頭では何も考えられなくて…目を閉じた。
改札口を出て少し歩くとタクシー乗り場がある。そこまで連れて行ってもらうと、ここでいいよ、と言おうと思ったのに、先に「家まで送るから。」と言われてしまった。
幸いタクシーは待つことなくすぐに乗れた。運転手に、
「どちらまで?」
と聞かれると、
「ここから一番近い病院へお願いします。」
と言う彼。
「駄目!病院へは行かない。西町の小学校までお願いします。」
そう言うとゆっくり車は動き出した。