永遠の色を重ねて


 みんなから一人離れて絵を描いている立樹くんに、一人の男の子が話しかけていました。


 八嶋 海翔(ヤシマ カイト)くん。私の担当ではありませんが、確か立樹くんと同じ小学校五年生だったと記憶しています。


「なーなー立樹っ、お前何描いてんの?」


 人懐っこい笑みを浮かべて、海翔くんは立樹くんの絵を覗き込みます。すると…。


「──勝手に見るなよ!」


 突然、立樹くんは大声で怒鳴りました。


 これには私を含め、周りに居た全員が驚いています。


「ほっといてくれよ!僕を一人にさせ…ゴホゴホッ!」


「立樹くん!」


 激しく咳込み出したので、私達は慌てて駆け寄りました。


 立樹くんのリュックサックから薬を取り出し吸入させると、少しずつ落ち着いてきたようです。


「もう…どうして急に怒鳴ったりしたの?」


「…」


 立樹くんは目を逸らし、答えてくれません。



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