SIGHT
今年の冬は例年にも増して冷え込みが厳しい。
その厳しい寒さの中、葉子は一人歩いて帰ることを望んだ。
私は荷物を葉子の家に置き、探しに出る。
このまま帰れるわけが
ないだろう。
後ろから付いて来るかもしれないと思い、殆ど歩くのと変わらないペースで葉子の家に荷物を届けたのだが、一向について来る気配は無い。
「あいつ、どこ行ったんだよ。」
夜道を一人私は自転車をとばす。
来た道を辿るが葉子どころか、人影すら見当たらない。
「行き違ったか?」
見落とさぬよう細心の注意をはらいここまで来ている。そんなはずは無い。
辺りを見回し、そこで私は気付く。
昔から葉子がよく行っている場所があった事を。