SIGHT
この街は雪がめったに降らない。ここ数年は積もった試しが無い。

しかし今日はどうだろう。
来るときは雨であったが今はこうして細かい結晶となり降り注いでいる。


「珍しく雪じゃねぇか。」

「もうコーヒーはいいのか?」


「そんなコーヒーばっかり飲めるか。さて、そろそろ行くか?」

バンに機材を載せてエンジンを掛ける。運転するのは必ず私だ。
あの短い手足に任せては命が幾らあっても足りやしない。



「そういや昨日帰りにちょうど事故に出くわして何枚か写真撮ったんだけど。」


「それを早く言えよ!
で、ネタになりそうな内容は撮れたのか?」


「いや、駆けつけた時にはもう搬送された後だったから。でも現場状況は一様撮っておいた。」


私は嘘をついた。いや、実際には仕事用のカメラには現場状況しか映っていない。

だが自前の愛用のライカには一枚だけフィルムに被害者を映した。



「それでも十分だ。ま、とりあえず現場行くことが先だな。」



「お前は気楽なもんだな。隣でそうやって喋ってりゃいいんだから。」



「運転変わって欲しいなら早く言えよ。」



「全力で遠慮する。」


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