SIGHT
久しぶりの缶コーヒーを飲み干し、少しは体が温まった。


降り注ぐ雪の結晶は次第に大きさを増して薄く積もりだす。
コーヒーの湯気だと思っていたが、気温が随分と下がったようだ。


「よう。飲んだか?」

ズボンをビチャビチャに濡らした涼太は寒さのせいで震えているのか何なのか…もう訳が分からない。
「涼太、一体お前は何がしたいんだ?」


「水も滴るいい男だろ?」



いくら未来のロボットでも水に濡れればショートするだろう。どうやら手遅れのようだ。


「頭でも打ったか?」

「バカ言え。被害者の遺留品見つけたに決まってるだろう。」


ビチャビチャのポケットからクロノグラフの銀の腕時計を取り出し、
自慢げにほくそ笑む。

ガタガタ歯を震わしてまでよくやるよお前は…


「浸水して壊れてはいるが品としてはこれで十分だろう。」


「よく川に入る覚悟があったな。」


「褒めんでいいから早くコーヒー買ってきてくれ。寒くてかなわん。」



「ココアでいいか?」


「あんな甘ったるいもん飲めるか!」


その口が言うな…


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