SIGHT
記憶
重くだるかった気分は幾分楽になったが頭はまだ少し痛かった。
時刻は正午12時になり、朝来た看護婦が食事を運んできた。病院の食事は薄味が好みの私にとってベストな味の濃さであり、量もあまり多くなかったので完食した。

しかし、いつになれば退院できるのだろう。いつまでもここに居るわけにはいかない。とりあえず今日は大学の教授の講義があったのだが行くことは不可能だ。
「百道さん、体調はいかがですか?」
検温済みの体温計を回収するために再び看護婦がやってきた。

「大分ましになりました。あの、私はいつ退院することができるのでしょうか?」

「安心してください。今日はまだ無理ですが明日には異常がなければ退院できますよ。」

「良かった。ありがとうございます。」

「いえいえ。あ、そういえば昨日百道さんがここに運ばれてきたときに、ご両親がいらしてたのですが、どうしても今日は来れないので落ち着いたら連絡をしてほしいと言われてましたよ。」

そう言われて鞄の中に締まってあった携帯を取り出すと新着メールが二件入っていた。
一つは母からのものだったが、もう一件は同じ大学に通っている幼なじみの葉子からのものだった。
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