SIGHT
現れた異質
「茂!茂!」


聞き覚えのある声が耳元で反響する。



何で台所なんかで寝ているんだ?



「返事してよ茂!」





何で声色を変えて母さんは叫んでるんだ?




「聞こえてるよ。」




「はぁ、良かった。本当に良かった。」



「母さん…父さんは?」



頭の中で反芻していた言葉が口から零れる。




「…あんた、何言ってんの?」





何故そんなに顔を曳き吊らしているんだ?






「何って、何で父さん帰って来ねぇのかなーって聞いてんだけど。」




「うぅっ、茂っ、あんたっ」



何故母さんは泣いているのか訳が解らない。


「泣かないでくれよ。というか何で泣くんだよ?」



「あんた…記憶が無いの?」



嗚咽混じりの声をようよう聞き取る。





「記憶?何時の?」



「あんたが病院運ばれる前の記憶の事よ…」




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