SIGHT
また出て行くのと言う母に一言「うん。」と言い、私も外に出る。


同じ場所に居ることに、恥ずかしながら恐怖を感じる。


殴りつけるように、叩きつけるように浴びせられたあの声が頭から離れない。


スニーカーの踵をコンクリートに擦りながら私は歩いている。

行く宛てもなく歩いているわけではない。


勾配の緩やかな下り坂、右手側に見える秘密の隠れ家。


逃げたわけではない。


そう自分に言い聞かせ軋む扉を開く。


子ども達の姿はもうそこにはなかった。
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