オフィスの甘い罠
接客中の相手に気づかれ
ないように背後から囁き
かけるボーイの声に、
あたしは『え?』と振り返った。



(こんな時間から?

てゆーか誰よ……常連は
もうほとんど帰ったんじゃ……)



「―――――!!」



ボーイの肩越しに見えた、
案内されて歩いてくる人影。



その人物と目があった
とたん、あたしは息を
飲んでしまう。



「しゅ――…!?」



「よぉ。

久しぶり――紫苑」



ニヤリと唇の端をあげて、
イジワルく笑うのは。



「柊弥――…!!」



そう……今日の夕方まで
一緒に仕事してた、アイツ。



(な、なんで柊弥が
ここに――!?)



呆然とするあたしの脇を
通り抜けて、柊弥は奥の
テーブルに案内されて行った。



立ち上がろうともしない
あたしに、ボーイが不審な
目を向けてる。
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