オフィスの甘い罠
結局あたしは、自由出勤の
スタッフとして登録した。



昼間のあたしはごく普通のOL。



別に一人で暮らしてくのに
充分な収入はあるし、
疲れてる時にわざわざ
夜まで働こうとも思わない。



だけど、《香川 梓》を
知る人には思いもつかない
別の顔を、あたしが持ってる。



そんな魅惑的な“秘密”が
背中を押して、あたしは
再び夜の銀座に足を運んでた。



そして――初出勤の夜に、
あたしの世界は変わる。



あたしは気づいたんだ。



《Aphrodite》――この
空間は、現実であって
現実じゃない。



働くホステスも源氏名と
いう仮面を被っていれば、
そこを訪れる客だって、
現実なんか求めてない。
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