オフィスの甘い罠
そう――男達は面白くも
ない現実を忘れるために、
ここに来てる。



つかの間の安らぎと夢を
求める男が、仮面を被った
虚像の女と戯れる場所――…。



それが、夜の世界。



『ナニこれ……すっごい
楽しい……!』



初めて紫苑として接客した
時の高揚は、言葉にでき
ない快感だった。



誰も《香川 梓》としての
あたしなんて知らずに、
《紫苑》の美しさに目を
輝かせ、ある男は甘えて
きたり、ある男は口説いて
きたり。



あたしが女王様にでも
なった気分で妖艶な笑みで
それをかわすと、男達は
さらにあたしに夢中になる……。
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