オフィスの甘い罠
「……やめたやめた。

せっかくのめでたい日に
ケンカしてても仕方ねー」



しばらく言いあった後
唐突に柊弥が言って、
ドサッと背もたれに身を預けた。



テーブルに置いてあった
グラスを長い腕を伸ばして
取って、



「お前もな。

あんまいつまでも可愛く
ないと、キスでその口ふさぐぜ」



「……………!!」



不覚にもピクッと肩を
震わせて、あたしは黙り
込んでしまう。



柊弥はおとなしくなった
あたしを満足そうに眺めて、



「そうそう。

今夜くらいは、素直に
しおらしくしとけ。

特別な日なんだから」



“特別な日”。



その言葉が小さく胸に
引っかかった。



「……別に特別じゃないわよ。

めでたくもないし」
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