オフィスの甘い罠
その子達が遠ざかったのを
見送ってから、あたしは
目を吊り上げて柊弥に迫った。



「どーゆーつもりっ、店に
クレジットカード置いてく
なんて!

個人情報とかカード犯罪
とか超うるさいのに、んな
ことしたらこっちが迷惑
こうむるでしょっ!?」



柊弥は耳に指を突っ込んで
ロコツに『うるさい』って
顔してから、



「んなこと言っても、
昨日はサッサと店出たかったし。

あれ渡しときゃトンズラ
するとは思われないだろう
から、勢いでだな――」



「勢いで渡すもんじゃない
でしょ!?

しかもアンタ、さっき
忘れてたって言ってたじゃない」



鋭く突っ込むと柊弥は
ピクッと眉を震わせて、



「……さっきはちょっと
別のこと考えてたんだよ。

本気で忘れてたわけじゃないさ」
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