オフィスの甘い罠
「どうだか。

あげてもいいとかも
言ってたじゃない。

マジでワケわかんない」



吐き捨てるように言うと、
柊弥の表情が少しだけ
かげったような気がした。



柊弥はあたしからフイッと
目をそらすと、さっきより
幾分トーンの下がった声で、



「別にマジでお前に
やってもよかったけどな。

ここに入ってんのは、
どーでもいいムダ金だから」



「え…………?」



(ムダ金? どーゆーこと?)



怪訝な顔で柊弥を見る
けど、柊弥はまだあたし
から目をそらしたまま。


疑問にも、答えるつもりは
ないみたいだった。



「まぁせっかく来たん
だから、今日もここで
パーッと散財してくさ。

そうすりゃお前の稼ぎにも
なるだろ」



そう言うと柊弥はまだ
半分以上残ってた水割りを
一気に飲み干して、空に
なったグラスをあたしに
突き出す。
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