オフィスの甘い罠
「三浦さん。オレは――…」



とっさにそう口を開いた
けれど、その先の言葉は
出てこない。




今さら表面だけの言い訳を
して何になるのか。




――わかってる。


三浦さんの言ってる事は、
全部図星だ。



(お手上げだよ。ったく……)



柊弥は手に持ったまま
だった書類も全部机の上に
パサッと置いて、ゆっくり
立ち上がった。



自分を見つめる三浦に自嘲
気味の曖昧な笑みを浮かべて、



「だけど、アイツはいなく
なっちまった。

アイツには迷惑だったみたいだ」



すると三浦は、さっきと
同じようにアゴに手を
あてて軽く首をひねる。



それは考える時や反論を
する時に彼がよく見せる
クセだった。



「そうなのかな?」



「えっ!?」
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