オフィスの甘い罠
「……………」



そうだ。


三浦はよく知ってる。



柊弥の見る世界が灰色に
くすんでしまった理由も、
彼はお見通しだ。



「キミがそう考える……
そう思い込もうとしてる
理由は、なんとなくわかるよ」



わざわざ言葉を選び
直して、三浦はそう告げた。



「だけどな柊弥クン。

心の隙間を埋めるのは、
決して見せかけだけの
楽しみでも慰めでもない。

そんなものじゃ、本当に
キミに新しい世界を
開かせることはできない」



「見せかけの……楽しみ……?」



「そうだよ。

そんなものでどれだけ心を
埋めたって、結局は
空っぽで寒いままなんだ。

本当にキミに新しい変化を
くれるのは、そんなもの
じゃなくて……」




――“真実の気持ち”だよ――




囁くように、三浦はそう言った。
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